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柑橘農業システムとは

特異な地形条件下での高いサステイナビリティ(持続可能性)を有する
「愛媛・南予の柑橘農業システム」

愛媛・南予の柑橘農業システム

Point.1未来に継承したい美しい段々畑

未来に継承したい美しい段々畑

宇和海に面した急斜面を切り拓いて作られた段々畑は、山の斜面に沿って麓から頂上まで続き、「耕して天に至る」と形容される壮大な景観を形成しています。石積みの段々畑では、園地における作業効率向上のため樹体をコンパクトに仕立て、収量を確保するため栽植密度を大きくするなど、家族経営を支える工夫がなされています。
柑橘農業システムの形成とともに、この地域で発展してきたランドスケープは、長い歴史の中で、一人ひとりの生産者が、厳しい地形条件を克服してこの地で生き抜いていくために続けた地道な努力が作り上げたもので、この地域の人たちの誇りとなっています。

Point.2過去の数多くの気象災害においても
高いレジリエンス(回復力)を発揮

過去の数多くの気象災害においても高いレジリエンス(回復力)を発揮

台風に伴う潮風害・塩害による樹体の枯死や落葉(1991年、2004年)、大雪、大寒害による樹体の枯死や果実品質の低下(1917年、1977年)、未曾有の大干ばつによる樹体の枯死や生産量の激減(1967年)等に対応し、防風垣の整備や生産品種の多様化、大規模な潅水網の整備を進めるなど、足腰の強い産地を形成しています。
今般の7月豪雨災害において土砂崩れや河川の氾濫により、樹園地の崩落や樹体の流出など甚大な被害を受けましたが、地域が一体となって産地の復興に取り組んでいます。

Point.3果樹同志会による技術の伝承

果樹同志会による技術の伝承

意欲ある果樹生産者が団結し、果樹農業の振興に主体的に取り組む同志会組織は、南予地域に生まれ、全国に広がった、長い歴史を有する組織です。若い担い手を対象とした石積み技術の研修会の開催など、技術を後世に受け継いでいく取組も進められています。

Point.4生産者主体「共選」による産地づくり

生産者主体「共選」による産地づくり

南予地域の各地区にある「共選」は、多数の小規模な家族経営が強固に結束し、主体的・戦略的な生産・販売に取り組む、この地域にしか見られない固有の組織です。
生産者自身が運営する共選は、先人たちから引き継いだ柑橘農業への情熱や、将来にわたって産地を発展させていくという強い意志、さらには新たな技術や仕組み等を取り込んでいくチャレンジ精神など、柑橘農業システムの形成を支えてきた土台そのものです。

Point.5太陽の恵みと地域循環型農業の確立

南予地域は平均気温が16℃を超える温暖な気候、加えて「太陽からの直射日光」「海面からの照り返し」「石積みからの反射日射や熱放射」の「3つの太陽」に恵まれるなど、良質な柑橘の生産に必要な条件が揃っています。また、魚かす肥料や、真珠のアコヤガイの殻を活用した石灰質資材など、海の恵みを柑橘栽培に活用する一方、柑橘ジュース搾汁残さ等を給与して、みかんフィッシュ、愛媛あかね和牛などのブランド産品を開発するなど、養殖漁業や畜産業との連携による地域循環型農業を確立しています。

太陽の恵みと地域循環型農業の確立

3つの太陽

●太陽からの直射日光
南向きの段々畑に日の出から日の入りまで降り注ぐ太陽の光
●海面からの照り返し
段々畑の眼下に広がる宇和海からの反射光
●石積みからの輻射熱(反射日射や熱放射)
先人達が手積みで築造した石垣からの反射日射や熱放射

Point.6日本一を誇る柑橘生産量と品目数

日本一を誇る柑橘生産量と品目数

南予は柑橘王国愛媛の生産量の約7割を占めています!

愛媛県は、温州みかんのみならず中晩柑類を含めた柑橘類の収穫量と品目数がともに日本一の柑橘王国で、この屋台骨を担う南予の柑橘生産は、高品質かつ多種多様な柑橘の生産・販売を通じて、地域の家族経営の生計を支える極めて重要な収入源で、柑橘ジュースをはじめとする多種多様な柑橘加工品も生産されています。
また、将来にわたって産地の競争力を維持強化していくため、生産者とみかん研究所の協働により、新たな品種の開発に欠かせない遺伝資源として様々な品種が保存されています。

Point.7石積みの段々畑が保全する農業生物多様性

石積みの段々畑が保全する農業生物多様性

急傾斜地に築かれた段々畑は、その側面に石積みの壁を設けることにより、土壌の流亡、海への流入を軽減する役割を果たし、自然環境の保全に貢献しています。
石垣は植物にとっては厳しい環境ですが、それゆえ外来種の侵入が阻まれ、ヒメウラジロ、イヌノフグリなど、地域の在来希少植物の格好の生育環境となり、生物多様性を保全するうえで重要な役割を果たしています。

Point.8地域に受け継がれる農文化

地域に受け継がれる農文化

日々の暮らしの中でも、柑橘の始祖に感謝する伝統的な「みかん祭」や、柑橘を用いた伝統的な郷土料理など、柑橘と密接に結び付いた伝統文化が継承されており、長い歴史を持つ柑橘農業の存在が、地域の農家はもとより、広く地域住民の生活の一部となっています。

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